ソルティキャップ
そうして俺らは待合スペースに入った。
「真結は、塩アレルギーなんだ」 
俺は目を見開いた。聞いたことのない病名が俺の頭を走ったからだ。
「塩を食べたり、触ったりするとアレルギー症状が出る。食べ物は100g当たり0.15gまでしか食べられない。人の汗や涙でも症状が出ることがあるから、温度も湿度も調整された部屋にいる」
目をパチクリさせる俺を見ぬふりして、叶汰はさらに説明を続ける。
「少しずつなら大丈夫だから、点滴で食事で摂れない分の塩分を摂って、何とか命を繋いでいるんだ。それでも、他の人よりも摂取量は少ないから、体調を崩すこともある」
叶汰は淡々と話していた。でもどこか感情的で俺は苦しくなった。
「そう、だったんだな…」
「とりあえず今日はもう帰れ。真結も検査中だし」
俺は言われるがまま待合スペースを出て、帰路に立った。差し入れに持っていったゼリーを食べると、心なしかいつもよりしょっぱく思えた。
< 41 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop