モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ベアトリスが以前と違い表立って悪く言われているのにユリアンも気づいていた。召喚を失敗したことと、ベアトリス自身の攻撃性がなくなったのが原因だろう。

 ベアトリスはほんの少しだけ悲しそうな顔をするものの、自分を悪く言う相手に文句を言うでもなく立ち去っていく。

 だからそれまではベアトリスの攻撃からほかの生徒を助けるために光らせていた目を、ベアトリスを心配して彼女に向けるようになっていた。

「一方で著しい能力の低下がある。クロイツァー公爵家の血筋では考えられない精霊を召喚し、本人からも以前のような強い魔力を感じなくなった。よく見かけた威嚇の炎を召喚式後は一度も見ていない。今の彼女は魔法を使えるのか?」

 淡々と語ったゲオルグは、ユリアンに問うような目を向ける。

「まったく使えないわけではない。だがないも同然だ」
「そうか」

 ゲオルグはいったん目を伏せる。それから意を決したようにユリアンを見つめた。

「正反対になった人格。失った能力。変わらないのは見かけだけ。まるで中身が入れ替わったようだな」
「入れ替え……」

 ユリアンは不穏な思考を振り払うように首を横に振った。

「それは考えられない。なぜならベアトリスは十年以上前の出来事を覚えていた」
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