モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ベアトリスの胸が少しだけ痛む。それでも彼の助けになりたい気持ちも大きかった。

 だから自分も力になると伝えたつもりだけれど、ユリアンは困惑したような顔をして黙り込んでしまった。

「聖女が王妃?」
「はい。ツェザール様からうかがいました。聖女様が見つかったらユリアン様は私と婚約解消をして聖女様を妃になさると」
「は? いや、それは……」
「聖女様を保護するのを目的とした結婚かと思いましたが、今のユリアンさまの顔を見たらそうではないとわかりました……聖女様がお好きなんですね」

 必死に探そうとしている様子から聖女への気持ちが表れている。

 たとえ会ったことはなくとも、王族の彼にとってはより特別な存在なのだろう。

「私はおふたりの邪魔にならないように、今後についてしっかり考えていますから心配しないでくださいね」

 にこりと笑って彼に告げる。いつになく饒舌になるのは、自分が思っていたより動揺している心を隠すため。
 ユリアンは優しいから、婚約解消でベアトリスが寂しく思っていると知ったら罪悪感を持つかもしれない。

「待ってくれ、今後についてとはどういうことだ?」

 ユリアンはなぜか慌てている。

(聖女様との結婚はまだ秘密だったのかしら)

 ツェザールが先走って情報を漏らしてしまったと知り、焦っているのか。
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