モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 その後受けた仕打ちはひどいものだった。恐ろしい魔法で何度も痛めつけられ、血まみれになって転がっている。体を動かす気力はもう残っていなかった。

「いい加減白状しなさい。これ以上傷を負えば治癒魔法でも癒しきれなくなりますよ」

 口調は丁寧ながらも、心の底から震えがくる冷たい声だった。

 ロゼは先ほどから自分を苛む神官たちの主に視線を移した。緑色の髪をした彼は、白地に金糸銀糸で装飾をされたひと際立派な神官服を身につけている。

「わ、私は……なにも知らない」

 掠れた声でそう言うと、喉の奥から血が込み上げた。

「ならばなぜ、あなたは私たちに逆らい逃げたのです?」
「それは……」
「あなたが聖女を匿っているからでしょう?」
「ち、違う……わ、私は聖女なんて知らない」

(それしか言っちゃだめよ!)

 ロゼは必死に自分に言い聞かせながら、三日前に孤児院に突然神官が押しかけてきたときの出来事を思い出していた。

『我々は森で迷子になってしまった聖女様を捜しています。心あたりはありませんか?』

 問われたロゼは、とっさにレネを思い出していた。

 森で出会ったとき平民の子には見えないと感じた。それにレネが身につけていた服は、神官たちのローブにどこか似ていた。
 院長とシスターに相談して、ひとまず神官には知らないと答えた。
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