モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 問いつめたいことは多くある。

「お前に会いたいとおっしゃる方がいるため連れてきた」
「私の護衛はどうしたんですか?」
「邪魔をしたので部下に足止めさせている。王家の騎士に攻撃されるとは思っていなかったのか混乱していたな。少々卑怯だが、ほかに方法がなかったから仕方がない」

 ツェザールはどうでもよさそうに答える。

「仕方がないって……これは犯罪行為だわ」
「そうだな。だが犯罪に手を染めてでも、お前のような悪女を王太子妃にするわけにはいかない。それがこの国のためだ。ユリアンはすっかり腑抜けてしまったが、俺はなにがあっても騙(だま)されない」

(この人は私がなにを言っても信じてくれない)

 ベアトリスは込み上げる怒りをぐっとこらえた。

 ツェザールを責めたい気持ちでいっぱいだけれど、今はここを脱出する方法を考えるのが優先だ。

「私に会いたい人とは誰なんですか?」
「今から向かう。ついてこい」

 ベアトリスの意向はいっさい考慮されないようだ。彼の態度には不満しかないが、この小さな部屋に閉じ込められているよりは、状況を把握するために外に出た方がいいかもしれない。

 ツェザールに続いて部屋を出る。ベアトリスが閉じ込められていたのは大きな建物の三階部分のようだった。石造りの階段を降りて進んでいくと、だんだん明るくなってきた。

(外に向かっているみたい)

 ベアトリスは神経を尖らせ、周囲を観察していく。
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