モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
(ここはたぶん神殿ね。柱や天井の形が神殿独特のものだもの)

 この先に待っているのは神殿の関係者なのだろうか。ますます気が滅入ってくる。

(さっきの恐ろしい夢が現実だったとしたら、神官は善人じゃないわ)

 建物から出て中庭のようなところを進む。すると石畳の広場の中央で、金糸銀糸で装飾された豪華な神官服をまとった神官がひとり佇んでいた。

 神官は近づくベアトリスを見て、目を細めた。

 彼の緑色の髪は艶やかで豊かだが、目じりには深いシワが寄っていて年齢が予想出来ない。身につけているものから高位の神官だと考えられるが、七十歳を超えるというドラーク枢機卿ではないだろう。

「スラニナ大司教。クロイツァー公爵令嬢をお連れしました」
「ツェザール殿、ごくろうさまです」

 ツェザールは騎士の礼で返す。

「ベアトリス嬢、このように呼び出して申し訳ない」

 スラニナ大司教は穏やかな口調で告げた。誘拐されたくらいだからもっとひどい扱いを受けるだろうと予想していただけに、ベアトリスはまるで平常時のような彼の態度に戸惑う。

「あの……なぜ私を?」
「それはあなたに頼み事があるからです。王太子殿下とクロイツァー公爵にあなたとの面会を依頼したのですが、断られてしまいました。そのためこうしてツェザールに連れてきてもらったのです」
「頼み事?」
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