モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ツェザールが叫ぶ。スラニナ大司教は嫌そうに顔をしかめた。

「うるさい男だ。しばらく黙っていろ」

 そう吐き捨ててなにかつぶやくと、ツェザールが喉を押さえて苦しみだした。

「ツェザール様? いったいなにが……」
「魔法で声を封印したのですよ。痛みはそのうち取れます」

 慌てるベアトリスに、スラニナ大司教はなんでもないように答える。

「どうしてそんなひどいことを」

 ツェザールは彼らの協力者ではないのか。

「そんなつまらないことよりも、ほら、あそこを見てみなさい」

 スラニナ大司教が埃を払うように手を振る。すると神木の前にそれまで見えなかったなにかが現れた。

「あれは……」

 ベアトリスは目を凝らす。そして息をのんだ。

 神木の前には小さな女の子が横たわっていた。かなりの距離があるのに、スラニナ大司教の魔法なのだろうか、不思議なほどによく見える。

 少女は胸の上で手を組み眠っている。彼女の周りは氷のようなもので覆われていた。
 けれど驚愕したのはそれが原因ではない。眠りについている子どもの顔は、ロゼだった頃の記憶に強く残っているものだったのだ。

「レネ!」

 思わず叫んだベアトリスに、スラニナ大司教が怪訝な眼差しを向ける。

「ベアトリス嬢がなぜ聖女の名を?」

 不審そうな問いかけに応える余裕はなかった。

(どうして? どうして年を取っていないの?)
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