モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 レネの姿はいまだ子どもで、ロゼが妹のようにかわいがっていた頃のままなのだ。

「大人になっているはずだわ……」

 そうだ。ユリアンが聖女は二十六歳だと言っていたではないか。

 レネが成長したらその年頃になる。

(あの子どもは別人なの? いいえ、そんなはずがない)

 混乱して考えがまとまらない。それなのに込み上げるものがあり、目の奥が熱くなる。

 あの子はレネなのだと、本能が訴えているのだ。

「ベアトリス嬢はずいぶんと動揺しているようですね」

「……なぜあのような状態に?」

 スラニナ大司教は肩をすくめた。

「聖女は自ら眠りについたのです。目覚めを待っていましたが一向にその時がやってきません。だからあなたの力が必要なのですよ」
「自ら眠りについたって……」

 それが本当ならレネは生きるのを拒否したということだ。

「……どうして聖女様を虐げていたの?」

 ふとそんな言葉がこぼれた。

「これは驚いた。ベアトリス嬢はずいぶんと想像豊かな方だ」

 スラニナ大司教はさも驚いたような口ぶりだ。しかしその目にはいら立ちが浮かんでいる。

「自ら眠りについたのは、現実から逃げたいからでは?」

 スラニナ大司教を初めて見たときから感じていた既視感の正体に、ベアトリスは気づいていた。
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