モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ユリアンの凛とした声が響く。

 スラニナ大司教の顔に焦りが浮かぶが、それでもまだ挽回出来ると信じているようだ。

 彼は教徒に教えを説くときのように両手を広げ、語り始める。

「王太子殿下、大きな誤解があるようです。我々は聖女を見つけ、べアトリス嬢の協力のもと、神木を癒そうとしていたのですよ。それは本来のフィークス教団の役割であります」

 慈悲深くも見えるその姿は、事情を知らなければ惑わされてしまいそうな神聖なものだった。しかしユリアンはわずかにも揺らがなかった。

「お前たちの行いはすべて露見している。そこにいるツェザールによってな」
「ま、まさか?」

 スラニナ大司教の顔が驚愕にゆがむ。声を消されたツェザールを憎々しげに睨む。

 自分たちが騙していたつもりが騙されていたのだから、その驚きは相当のものだろう。

 それはベアトリスも同じだった。

(ツェザール様がユリアン様のスパイの役割をしていたなんて)

 ベアトリスを睨む目には間違いなく憎悪があった。それだけに、彼がユリアンを裏切り神殿に手を貸していてもおかしくないと思ったのだ。

(でもツェザール様がスパイだとしたら、私が誘拐されたのはユリアン様も同意の上の行動だったんだわ)

 ずきりと胸が痛んだ。神殿が聖女を隠し、王家に嘘をついていた悪事を暴くには仕方がなかったのかもしれないが、利用された事実はベアトリスの心を苦しめる。
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