モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
　思いがけないユリアンの言葉に、ベアトリスは目を瞬く。

「召喚式の日から君は別人のように変わった。それもいい方向へ。それでもふとした拍子に以前の面影が出てくる。君は間違いなくベアトリスだが、なにかがあったのは間違いない。それが突拍子のない話だったとしても、俺は信じ受け止める」

　ユリアンの眼差しはどこまでも優しい。

　ベアトリスの胸はトクトクと高鳴り始める。不安はある。それでも彼を信じ頼りたい、そう思ったのだ。

「ユリアン様、私には前世の記憶があるのです」

　ベアトリスの告白に、ユリアンの瞳が驚愕に揺れた。



「……それがベアトリスが変わった理由か」

　ベアトリスの話が終わると、ユリアンは深いため息をついた。

「はい。ロゼの人格とベアトリスの人格が混じり、今のようになりました」
「そうか……」
「信じてくださるんですね」

　彼の表情を見てそう確信したベアトリスはほっと安堵の息をつく。

　スラニナ大司教の手で殺されたことについては、感情を抑えて淡々と告げた。

　それでもユリアンは眉をひそめたが、追及はしてこなかった。

「もちろんだ。納得出来たよ」
「この件は家族にも話していません。言っていいか迷ってしまって」
「クロイツァー公爵家の人々なら受け止めてくれるだろう。でも無理に言う必要はない」
「そうですね。ゆっくり考えます」

　ベアトリスはユリアンを見つめて微笑む。
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