モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「迷ったり悩んだりしたときは、俺を頼って」

 ユリアンがそう言いながらベアトリスの手を取った。眼差しは慈しみにあふれている。
 ベアトリスは胸の高鳴りを覚えながら、心からうなずいた。

「はい、頼りにしてます」

 いつの間にか彼に対する信頼が誰よりも大きくなっている。

 ユリアンはそれはうれしそうに目もとを和らげてから、ベアトリスの小さな手を口もとに引き寄せそっとキスをした。



「この氷のような塊を壊すことは出来るんでしょうか」

 ベアトリスは眠るレネを見下ろしつぶやいた。

 ユリアンは難しい顔をした。

「今の状態は眠りというよりも時を止めているように見える。そのような術は聖女しか使えない」
「私たちには助ける方法がないのですね」

 ベアトリスは眉を下げ肩を落とす。

 せっかく再会出来たのに、眠ったままのレネの姿が悲しい。彼女を苛む者はもういないのだと教えて抱きしめてあげたいのに。

 レネの頬に手を伸ばす。温度のない氷に妨げられて届かないのが悔しかった。

「レネ……」

 ベアトリスがそうつぶやいたそのとき、目の前が赤く輝いた。

「え? まさかピピなの?」

 見覚えのある光景にベアトリスが戸惑っていると、部屋でぐったりと眠っていたはずのピピが突然現れた。今朝までの弱々しさはなく、元気にベアトリスの周りを飛び回っている。

「ピピ、よかった! 元気になったのね」
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