モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
(私の想像以上に悪い行いが積み重なっているんだ)

 過剰に監視するのは、ユリアンがベアトリスのせいでいらぬ苦労をしてきたからかもしれない。

「この孤児院は貴族からの支援を失い困窮していました。偶然その状況を知り、力になりたいと思い、両親も賛成してくれたのでこうして通っています」

 真実だけを端的に述べると、ユリアンは納得してくれたようで、それ以上追及されるようなことはなかった。

 ただ、少し見学をしていくと言われてしまい、ベアトリスは戸惑った。

(ユリアン王太子が監視してたらやりづらいわ)

 邪魔はしないから気にするなと言われても、あのなにもかも見透かすようなサファイアブルーの瞳で見すえられると、落ち着かなくなる。

(それに怖いし。もうトラウマになってる気がする)

 いつもの調子を出せずにいたが、子どもたちはそんなことは関係なしにベアトリスの姿を見つけると駆け寄ってくる。

「ベアトリスさま、お勉強終わったよ! 綺麗に書けたから見て見て」

 一番勉強熱心なアンがベアトリスに書き取りをした紙を差し出してくる。そこにはこの十日でだいぶ綺麗になった文字が丁寧に記されていた。
「まあ、上手になったわね!」

 子どもの上達がうれしくて、ベアトリスは思わず大きな声を出した。

「えへへ……」

 褒められたアンは頬を染めて、恥ずかしそうにしている。
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