モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 早くもくじけそうだ。それでもせめて卒業はしないと、家族に申し訳がなさすぎる。

(子どもたちと過ごせた休みの間は天国だったな)

 アンたちは今頃どうしているだろうか。しばらく来られないと言ったら寂しそうな顔をしていたけれど、大丈夫だろうか。
 ベアトリスが行けない間は、公爵家の使用人に代わりを頼んでいるものの心配だ。

 ぼんやりと窓の外を眺めながらそんなことを考えていると、教室の中がひと際騒がしくなった。

 何事かと視線を巡らせると、入口からユリアンが入ってくるところだった。

 彼がこのクラスなのはわかっていたので驚きはしないが、緊張はする。

 ベアトリスはどうか気づかれないようにと願いながら息を潜める。しかし教室内に視線を巡らせていたユリアンに、あっさりと見つかってしまったようだ。

 目が合いぎくっとしたときには、彼はもうこちらに歩いてくるところだった。

(こっちに来る? まさかまたなにか言われるの?)

 ドキドキしていると、隣の窓際の席の椅子をがたりと引いてユリアンが席に着いた。ベアトリスはまたもやショックを受ける。

(この席順はどういうこと? 成績順なわけがないし、まさか婚約者同士を隣にって気遣い? そんなの全然必要ないのに! むしろ今すぐにでも婚約解消してもらいたいくらいなんだから)
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