モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「え……国に? それはまさか騎士とか文官に採用頂けるということですか?」

 人々が憧れるそれらの職業は、貴族か平民の中でも貴族と縁があり、身元がしっかりしている者に限られる。孤児院出身では話にもならないのに。

「先日、子どもたちの様子を観察していたんだが、才能がある者が何人かいた。眠らせておいては損失だ」

 つまり才能があれば、上に行くのも可能ということだ。

「それは……すごくいい考えだと思います。みんなとても喜びます!」

(あの子たちがそのことを知ったら、もっともっとがんばるようになるわ。必要なのは希望なんだもの。夢があるから努力出来る!)

 うれしくて、ベアトリスはユリアンの手を取ってありがとうと訴えたい気分になる。もちろん実際にはやらないが。

 けれどニヤニヤしているところを見られたようで、ユリアンが目を見開いた。

(あ、いけない……うっかり公爵令嬢らしくない表情をしちゃったわ)

 どうごまかそうかと考えたとき、ベアトリスの前の席の椅子が乱暴に引かれる音がした。

 視線を向けたベアトリスは、思わず変な声をあげそうになってしまった。

 前の席に座ったのは、ユリアンの側近であるツェザールだったからだ。

(なんでこの人までこんな近くなのよ)

 さらにツェザールの隣、ユリアンの前の席にもうひとりの側近ゲオルグが座る。

(うう……この席最悪だわ)
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