魔法のいらないシンデレラ
ロビーの真ん中、大きなテーブルに載せられた清河の花瓶に、フラワーアーティストが豪華に花を生ける。

「うわー、なんて素晴らしいの」

その存在感に圧倒されるように、瑠璃は目を見張った。

なにも知識のない素人でも、これは芸術だと感じる。

瑠璃は、花瓶の横にあるガラスのプレートに目を向けた。

ガラスには、清河の直筆カードが挟んである。

(幸運…まさにこのホテルのためだけの、清河さんの作品)

瑠璃は、何度も角度を変えながら写真を撮る。

季節のお便りや、SNSで発信するつもりだった。

(…違う。これは、もっとちゃんと撮るべき)

小さな画面と実物とを見比べた瑠璃は、古谷に撮影を依頼しようと思った。

(パンフレットの写真も、差し替えた方がいいかもしれない。これは、ホテルの顔になる)

瑠璃は、早足でオフィス棟へと戻った。
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