魔法のいらないシンデレラ
ホテルの車寄せに、1台の黒い大きなリムジンが滑るように入ってきた。

「高坂会長、お待ちしておりました。ようこそホテル フォルトゥーナ東京へ」

一生が、深々とお辞儀をして出迎える。

「やあ、一生くん。久しぶりだね、元気にやっとるかね?」
「はい、おかげ様で。高坂会長もお変わりなくお元気そうで」
「まあまあだな。さすがの私も歳には勝てん。あ、ほら、これが話してあった孫娘だ。麗華(れいか)、こちらが一生くんだよ。若いのになかなかのやり手だ」

一生は、杖を片手に後ろを振り返った高坂の視線を追う。

リムジンから、若い女性が降り立った。

ロングの巻き髪に高いヒール、短くタイトなワンピースに化粧も濃い。

一生が1番苦手とする人種だ。

「初めまして。神崎 一生と申します」

営業スマイルで挨拶したが、きつい香水の匂いに思わず顔をそむけた。
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