魔法のいらないシンデレラ
一生は、深々とお辞儀をした。

「皆様、誠にありがとうございます。ささやかではありますが、当ホテルからシャンパンをサービスさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ええ?!」

今までの微笑から一転、ご婦人方は驚きの表情になる。

「まあ、一生さん。よろしいの?」
「はい、もちろんです」

一生は、すぐ近くに控えていた早瀬に目配せする。

早瀬はすぐさま、失礼致しますと言いながら円卓にシャンパングラスをサーブしていく。

それを合図に、会場中のテーブルにも、一斉にウエイター達が配り始めた。

「まあまあ、本当にどうもありがとう」

そう一生に言ってから、佐知はマイクで会場に呼びかけた。

「皆様、ホテルの総支配人の方から、シャンパンをサービスして頂きましたわ」

あちこちで嬉しそうな歓声が上がる。

「とてもすてきなホテルの、粋な計らいをありがたく頂戴して、乾杯致しましょう!」

佐知の言葉に応じて会場中に、乾杯!の声が上がり、壁際に下がった一生達スタッフは、深々と頭を下げた。
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