魔法のいらないシンデレラ
「まあ、一生さん!」
「澤山様。本日は当ホテルをご利用頂き、誠にありがとうございます。ひと言ご挨拶にうかがいました」
「総支配人のあなたが、わざわざありがとう!私も会長1年目の初めてのパーティーでしょう?皆様に喜んで頂ける会場は、このホテルしかないと思って決めたのよ」
「光栄に存じます。私も同じく就任1年目で、身を引き締めております。ご期待には添えられておりますでしょうか?」
「ええ。皆様、とても楽しんでおられるわ。ねえ?」

そう言って同じテーブルのご婦人方に顔を向けると、皆、一斉に頷いて佐知に同意する。

「それはもう。お食事も美味しいし、夜景や雰囲気もすてきよね」
「スタッフの方々も気持ちの良いサービスだし」
「わたくし、次回はプライベートでも利用させて頂くわ」
「わたくしも。主人に、会社のパーティーや会議には、ここがいいわよっておすすめしてみようかしら」

口々に笑顔で頷き合う。

「それに小耳に挟んではいたけれど、新しく就任された若き総支配人って、あなたのことだったのね。まあ、なんて美男子なの」
「本当に。しかも、こんなに大きな一流のホテルをしっかりまとめていらっしゃるのね」

それを聞いて佐知は嬉しそうに笑う。

「ええ。一生さんは才能溢れる方よ。息子と同じ30歳とは思えないわ」
「まあ!そんなにお若いのね」
「それでいて、こんなにきちんとしていらっしゃるなんて。本当に素晴らしいわね」
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