魔法のいらないシンデレラ
(んー、こんな感じかな?)

オフィス棟3階、企画広報課の前の廊下で瑠璃は1人、クリスマスツリーの飾りを手にして考え込んでいた。

気づけばもう11月の終わり。

ホテルはクリスマスの準備で大忙しだった。

少し前まで週刊誌の問題を抱えていたのが嘘のように、あのあと急に動きがなくなった。

顧問弁護士の島田から、どうやら高坂会長の鶴の一声で、不穏な動きをしていたホテルを黙らせ、週刊誌への妙な働きかけも取り下げられたらしい、と報告があった。

時期的に考えて、おそらく麗華が祖父にそう頼んだのではないかと、一生を初め、早瀬も瑠璃も心の中で思っていた。

そして瑠璃と奈々が取り組んでいた総合パンフレットも、ようやく完成した。

表紙には、ホテルのエントランスの写真。

そして次のページには、清河の花瓶に生けられた芸術的な花の装飾。

ホテルに足を踏み入れるお客様を出迎えるような、まさにホテルの顔ともいえるその花の写真は、古谷が撮影したものだった。

パンフレットを開いた時、高級感溢れるその大きな写真に思わずハッとさせられる。

完成してすぐ、瑠璃は佐知に届けに行った。

「まあまあ、なんてすてきなの」

半分言葉を失うように、佐知は感激してパンフレットを眺めていた。

さらにページをめくると、ホテルでのワンシーンを切り取った様々な写真。

佐知と瑠璃の桜並木の写真も、もちろんある。

「こんなすてきなパンフレットに私も載せて頂いて、本当にありがとう!宝物にするわね」

佐知は何度も頷いて、瑠璃に微笑んだ。
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