魔法のいらないシンデレラ
「中を確認して頂けますか?」
「え、私が?何でしょう?」
「シンデレラのお忘れ物てす」
「…は?」

瑠璃が目をパチクリさせると、男性はクスッと笑って箱のフタを取った。

「あっ!」

中には、瑠璃が同窓会で忘れていった白い靴が入っていた。

男性は、そっと箱から靴を片方取り出すと、床に置いた。

そして瑠璃の右手を取り、どうぞと優しく微笑む。

瑠璃は、ゆっくり右足を白い靴に入れた。

靴は、瑠璃の足にピタッとはまるようになじんだ。

「どうやらこの靴は、あなたのもので間違いないようですね、シンデレラ」

ふふっと笑いながら瑠璃の顔をのぞき込んだ男性に、瑠璃もはにかんだ笑顔を見せた。
< 34 / 232 >

この作品をシェア

pagetop