魔法のいらないシンデレラ
そのあと、運ばれてきた豪華な朝食をごちそうになりながら、夕べの出来事を聞かせてもらう。

聞いているうちに、瑠璃は顔が真っ赤になるのを止められなかった。

(酔いつぶれて、部屋に運んで頂いたなんて…そんな恥ずかしいことを)

思わず両手で頬を押さえたが、男性は気にも留めていないようだった。

「勝手なことをして申し訳ありませんでした。ご家族の方も、心配されたのではないでしょうか?連絡するすべがなく、私としても気がかりだったのですが…」

本当に心配してくれたらしく、真剣に瑠璃の顔を見ている。

「いえ、大丈夫です。宿泊していると思っているみたいで…」

ああ、と納得して頷いた男性を見て、和樹と泊まることを想像させてしまったと、瑠璃は恥ずかしさと情けなさにうつむく。

それにしても、ロビーでのことに始まり、靴のこと、そして夕べのことも、この方にはお世話になりっぱなしだった。

瑠璃は、改めて男性に向き合う。
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