魔法のいらないシンデレラ
「それで、どんな職種で探してるの?」
「あ、えっと。私、なにも資格とか持っていないし、やっぱり今と同じような事務職とか…。スマホで検索して、いくつか求人サイトも見てみたんだけど、医療事務って、資格なくても大丈夫かしら?」
「ああ、医療事務ね。お義父さんの病院は、資格持ってる人を採用してるみたいだけど。あくまで民間資格だし、なくても雇ってもらえるところ、あるんじゃないかな?うちの病院の事務の人達も、多分持ってないと思う」
「そう…」

高志は、小さく頷く瑠璃をじっと見つめる。

藍の話では、契約が切れたら結婚の準備を始めるのでは?とのことだったが、今の瑠璃の様子からはそんなふうには見えない。

少し言葉を選んでから、高志は瑠璃に話し始める。

「ねえ、瑠璃ちゃん。すぐに仕事を探さないで、少しのんびりしてみたらどうかな?」
「え?のんびりって?」
「そうだな…旅行に行ったり、習い事したり。何もせず、ただぼーっと過ごすのでもいいしね。2年間頑張ってきたんだから、少し休んだらいいよ」

瑠璃は、視線を外して考え込む。

「でも、そうしたら4月の仕事始めに間に合わないし…」
「ん?4月の?」
「そう。入社式って、どこも4月の1日なのでしょう?」

高志は、なんだと少し笑う。

「それはね、新卒の新入社員だけだよ。瑠璃ちゃんは新卒ではないから、企業が募集しているタイミングで働き始めたらいい」
「え、そうなの?」
「ああ。なんでもやりたい仕事をすればいいよ。アルバイトから始めて、続けられそうなら社員になるってやり方もあるよ」

瑠璃は、高志の言葉に真剣に聞き入る。
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