魔法のいらないシンデレラ
続いては、和食レストランでお花見コースを頂き、茶道体験にも参加させてもらう。

その様子を、古谷が付きっきりで撮影するという形だった。

お料理も美味しく、また、教わりながら自分でお茶を点てたりと、終始佐知と瑠璃は、笑顔で楽しんでいた。

少し休憩を挟んでから、今度はホテルのあちこちで、瑠璃一人での撮影だった。

全て終わったのは夕方5時を過ぎた頃。

私服に着替えると、急に疲れがどっと押し寄せてきた。

「お疲れ様でございました。皆様、本当にありがとうございました」

ロビーラウンジに案内され、お茶を飲んでいると、満面の笑みで青木が声をかけてくれる。

「こちらこそ、お世話になりました。青木さんも1日立ち会ってくださってお疲れでしょう?」

佐知がそう言うと、青木はすぐさま否定する。

「いえ、わたくしは何も。皆様の撮影風景を拝見していると、とても楽しくて。素晴らしい写真になると確信しています」

そしてふと、真剣な表情で瑠璃を見る。

「今後のことなのですが…。古谷様の写真が出来上がり次第、パンフレットのデザインや構成を話し合うことになります。その席に、瑠璃様もご同席頂くことは可能でしょうか?もちろん古谷様と同様に、当ホテルと契約を結び、お給料を支払わせて頂きます。ただ、瑠璃様の職場は、副業を認めていらっしゃるかどうかが気がかりでして…」
「あ、それでしたら私、ちょうど昨日で契約期間終了となりまして…。今日から無職なのです」
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