魔法のいらないシンデレラ
「この度は、わたくしの監督不行届でこのような事態を招き、大変申し訳ございませんでした」

深々と頭を下げる一生に続き、申し訳ございませんでした!と声を張り上げて青木が頭を下げる。

その隣で早瀬も続いた。

総支配人室のソファに座った佐知は、三人に頭を下げられ、はあと大きく息を吐いた。

「顔を上げてちょうだい」

ためらったあと、ゆっくりと一生達は顔を上げる。

「一生さん」
「はい」
「私はとても残念です」
「はい。このようなことになったのは、私の責任です。澤山様に大変なご迷惑と…」
「いいえ、そうではありません」

ピシャリと遮って、佐知は一生を見据える。

「私が残念なのは、一生さんが私を呼び出し、青木さん達に頭を下げさせたことです」
「…は?とおっしゃいますのは」

佐知はまたもやため息をつく。

一生は姿勢を正して言葉を待つ。

「私が今回、お客様モデルとして撮影をお引き受けしたのは、私の意思です。主人にも確認を取り、この写真なら顔が判別出来ないから、問題ないと許可をもらいました。そもそも私は、主人の会社の役員でも何でもありませんからね。私はあくまで、このホテルのお客様の一人という立場で参加しました。そしてそれは瑠璃ちゃんも同じです」
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