敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
プロローグ
 大陸一の栄華を誇るガルニア王国。その広大な王宮のエントランスに一台の馬車が停まる。
 御者の手でゆっくりと扉が開かれ、侍従が降車を助けようと進み出る。それを短く諫め、俺は自ら馬車に歩み寄った。
「エミリア姫、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
車内に手を差し伸べると小さな礼の言葉の後、遠慮がちに嫋やかな手が重なる。手と手が触れた瞬間、そのやわらかさと温もりに胸が騒いだ。
 姫の体がピクンと跳ねたように感じたのは気のせいだろうか。伏し目がちに落とされた目もとから頬にかけ、微かに赤く染まっているように感じるのも、はたして俺の願望が見せる幻なのか。
 まるで縫い留められてしまったように彼女の一挙手一投足から目が逸らせなかった。
 ……いかんな。これではまるで初めて恋を知った小僧のようではないか。
 内心で苦笑しつつ、自分自身の感情になんとも言えぬ気恥ずかしさと、それを上回る狂おしいほどの高揚を自覚する。
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