敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 事故そのものへの恐怖とは別に、引火直後に火が消えたことに、あの場にいた全員が驚きと疑念を抱いたはず。
 サーカスの団員は、負傷した仲間の応急処置に同席を許されず蚊帳の外に置かれた恰好だ。普通に考えて、舞台袖でなにが起こっていたのか、不信に思わないわけがない。
 医師にしてもそうだ。待たされて入った舞台袖に水を使用した形跡はないのに、冷やして応急処置がなされた患部。私のような小娘に治療方針を説かれ、手渡された入手経路不明の治療用の粘土。本来なら猜疑心を抱いて当然だろう。
 そうした不穏の芽を摘んで、抑え込んでくれたのは他ならぬ殿下だ。ちなみにハウイットさんは殿下の指示で、今も後処理のために広場の管理事務所に残ってくれている。
「人は見えないもの、わからないことを不安がります。私が行ったのはそういった『力』の行使です。事故発生直後の不可解な出来事に疑心暗鬼になった人は多かったはずで、殿下が統制を取って抑えてくださらなかったらどうなっていたかわかりません」
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