敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 我が国では初代王モーリスの妃となった女性の他、過去に数名聖女の存在が認められており、全員なにがしかの形で王族の血を引いていた。要は皆、初代聖女の子孫なのだ。
 エミリアも亡き実母がガルニア王国所縁の人物であることはほぼ間違いない。エミリアは以前、『私は身内に縁が薄いですから、親族間で親密な関係が築けているのは純粋に羨ましい』と寂しげに微笑んでいた。実母の身元の特定はこれからだったが、この国に親類縁者がいて母の実家があることを、彼女に教えてやりたかったのだ。
 結局、疲労困憊した彼女に待ったをかけられて伝えるには至らなかったが……。
「おや、そうなのですか」
 ハウイットは俺の答えに、若干拍子抜けしたようだった。
 本音を言えば、役目はなくとも共にいてくれるだけで力強いし、そうしてくれたらいいとも思う。しかし俺と共にいたら彼女は今後、否応なしに聖女として表舞台に引き出されてしまう。
 今となっては昨夜彼女になにも告げず、巻き込まずに済んだことにホッとしていた。
「ああ、だから彼女は安全な王宮にいてくれた方がいい」
 本音を建前で包み込み、余裕の態度で口にする。
 ハウイットは俺を一瞥したが、なにも言ってはこなかった。
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