敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 私が差し出したそれを、彼は籠手に覆われた手でそっと受け取った。その様子は私が想像した以上にそれはそれは嬉しそうで、彼は愛馬に括った荷の奥にガラス細工でも扱うような丁寧さで慎重にしまい込んでいた。『もらうばかりで、なにも返せずすまない』と彼は言ったけれど、共に過ごした九日間の記憶がこれ以上ないお返しであり、私にとって宝物だ。
 彼が去ると、王都の賑わいと対照的に、車内は一気に静けさで満たされた。
《エミリア、大丈夫?》
《元気出せよ》
《大丈夫、私たちがおりますよ》
《あぁ、儂らが付いておるでな》
 口々に慰めてくれる精霊たちに微笑む。
「みんな、ありがとう」
 彼らの優しさに触れ、押し寄せる寂しさが少し和らいだ。
 その後は鎧の騎士様の代わりにハウイットさんがちょくちょく声をかけて様子を窺ってくれるようになった。そんな時は丁寧に受け答えし、それ以外は瞼を閉じて静かに王宮到着をまでの時間を過ごした。
 ついに馬車は王宮正門をくぐった。
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