逃すもんか
工房で
配属先で先輩の指導のもと新人のオレは、少しずつ仕事を覚えている。

ベテランパートさんの方が熟練の職人に見える。
オレの指導係7年目の田村先輩。
仕事の内容をオレに理解出来るように教えてくれる。
オレに最初の仕事を与えられた時も…

バックのどの部分のどんな工程なのかとか、
不良品にならないようなコツも教えてもらってから取り掛かる。
必ず、チェックしてもらって次へ進む。

本店やデパートの直営店へ納品するので、かなりの量を生産しなければならない。
オレも、もっと早く仕上げるようにならなければいけないのだが…

田村先輩は、
「いいかぁ〜。ベテランのパートさんや先輩の職人たちが手際良く仕上げるから焦ると思うけど、
大崎くんが速さにこだわって、
ザツな仕事で手抜きをしたら他の部分が良く出来ていてもその商品はB品扱いになってしまうんだ。
だから慣れるまでは速さよりも丁寧さに気をつけて欲しい。」

「ハイ!」
そうだよ。オレのパーツは大した部分じゃあないかもしれないけど、丁寧にまごころを込めなきゃ…
お客様が丁寧な仕事をしているバックだからこそ、欲しくなるんだ。
デザインが良くてもザツな作りなら、他のブランドのバックを買うだろうから…

黙々と作業しながら仕事をしていくウチに、平岡くんが言っていた
『お客様の欲しいものさえデザインして売れば良いみたいな…俺はああいうの嫌だなぁ…』っていう言葉を思い出した。
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