霊感御曹司と結婚する方法
第二章

相談役は見た!

 グリーンアビエーションのメンバーは、社員としての籍があるのは、実は私一人だ。

 吉田さんは役員だし、あとのメンバーはエムテイ商会に籍をおいたままになっている上、海外にいるという話だ。

 ただ、メンバーの中に、システム関連のコンサルとして招いている人が一人いて、その人だけは、私がいた支社に籍をおいている。その人とはまだ会ったことがない。

「遠城さんっていう人、知ってる? 君の出身の支社に所属の人で、エムテイでは、有名な人なんだけど」

 吉田さんが言った。

「いいえ。全く」

「まあ、その人は技術者だからね。関わり合いはないか」

 技術者といえば、向井さんもプラント系の技術者だった。

「その人には立ち上げ前からずっとお世話になっているんだけど、リモートでやり取りしていたから、こっちには一度も来たことはないんだ」

 今日の午後に、その人がオフィスに訪ねてくる。

 そして、実際に会ってみて、なぜ有名なのかはわかった。見た目は体格のいいおじさんなのだが、中身は女性だった。当然それだけで有名というわけではなくて、技術者としてかなりの実力者ということらしかった。

「はじめまして。本社に用があったから寄ってみたの」

 私は、彼女が来る前に彼女の入社年度を把握していて、向井さんと同期のようだった。年は三十後半といったところだ。だから、村岡さんと吉田さんより年上だ。

 吉田さんが出迎えた。

「村岡、しばらく海外出張中です」

「聞いているわよ。彼が帰ってくるまでこっちに滞在するの。彼に依頼された仕事で本社まで来ているのよ。ここ、いいところよねえ。思ったほど不便でもないし」

 オフィスを構えている場所は、大学や企業の研究所や公的機関の施設が集められた、産学公連携を目的に、ひと昔前に整備された地域にある。古さも感じるところもあるが、小規模事業者向けの建物が建ち並ぶ場所は比較的新しい。そこに間借りしている。

 ほんのしばらくの間、遠城さんが本社に用事が無い日は、こちらに来てくれることになった。

 村岡さんが出張に出てから、オフィスには二人きりで、私はともかく吉田さんが、落ち着かなさそうにしていた。実際のところは知らないけど、私にはそう見えた。

 吉田さんにとっては、私が起業メンバーに加わるなんて突然知らされたことだと思うから無理もないと思う。そういう意味では、私も彼に対して負い目があった。

 そういった状況で、少し年上で優しそうな遠城さんが顔を出してくれるというのは私にとってはとてもありがたいことだった。
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