霊感御曹司と結婚する方法
 彼女には華がある。そしてよくしゃべる。お昼を一緒にすごすと、ネタがつきることなくしゃべってくれる。私も学生時代にそういう女友達がいて、一緒にいて楽しかったし、すごく相性が良かった。遠城さんと会って、そういう楽しいことが思い出されて懐かしかった。

「家族はもう、いないのよね。兄弟はもとからいないし」

「私も一人娘です。両親は健在ですが……」

「彼氏は?」

「いないです」

「そうなの? 私は、今海外にいるのよね」

「すごいなあ……。外国人ですか?」

「そう、画家なの。日本画の」

「芸術家ですか……。なんか、納得です」

 納得というのは彼女の品がある外見からだ。彼女も芸術家とかそういう雰囲気を持っている。

 そんな感じで、彼女とは初対面からとりとめもない会話をしてきて、二、三日経ったころの会話でびっくりするような話が出てきた。

「神崎さんが、同じ支社の出身だから思い出しちゃった」

 遠城さんは急にしんみりした表情をして言った。

「今年に入ってすぐ、同期の友人を病気で亡くしたのよね。まだ、自分のなかで整理できていなくて」

 私はそれを聞いて、一瞬背筋が凍る感じがした。まさかと思う。

「彼、ガンだったらしいんだけど、全然知らなかったの。前に入院したとかは聞いていたんだけど、怪我の手術くらいにしか思っていなかったわけ」

「……半年くらい前ですかね」

「亡くなったのは、だいたいそうね。心当たりでもあるの? 向井俊夫って人だけど、知らないわよね?」

 私は黙って頷いた。

 遠城さんから、向井さんの名前が出てきて、心の底から衝撃が走ったが、黙って遠城さんの話の続きを聞いてみようと思った。

「……その方と、どういうご関係でしたか?」

「大学の同窓よ。修了コースは違うんだけど、同じ工学部だから授業は大体一緒に受けるのね。私たちは修士課程へも進んだから、ほんとにずっと一緒に過ごして仲がよかったの。仲間内で一緒に旅行もしたことも何度もあるし……」

 向井さんの出身大学を教えてもらったことがある。理工系の超難関の大学だ。

「入社してからも飲み仲間で、でも、みんな忙しいから……ね。思えば最後に飲みにいったの、一年も前だったかなあ。その時は、元気に見えたし、だから、亡くなったって聞いたのは寝耳に水だったの」

 遠城さんは、向井さんの奥さんとも知り合いだそうだ。奥さんもエムテイの同期入社の人で、向井さんと結婚してすぐ退職したらしい。

「派手目のすんごくキレイな人よ。向井くん、顔だけで結婚を決めたんじゃないかしら」

 それを聞いて、私はなんか納得するものがあった。向井さんとは、当然、奥さんのことは話題にしたことがなかったけれど、彼の女性の好みは遠城さんの言うとおり見た目重視だったと思う。そういう女性に一目惚れして、そして、押して押して、堕とす。

 何故そう思うのかというと、彼は乗っている車とか、洋服とか、持ち物とかを、誰もが知る、わかりやすい超一流のブランドで揃えていたからだ。

 彼は子供はいらないと言っていたし、お給料もよかっただろうし、余裕をたくさん持っていた。そして、そういう彼が好む女性は誰もが認める美人でないと嫌なんだろうなと思っていた。病気が発覚してから、彼は考えが変わったのだとは思うが……。
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