霊感御曹司と結婚する方法
 彼の言うことがどこまで本当かは私にはわからない。ただ、一筋縄ではいかない事情はあるのだろうとは思う。彼の言うことに何か返すことがあるか、言葉を探していたところ、彼がびっくりするようなことを言った。

「君は故郷に帰るんだろう? それなら、俺もつれて行けよ」

「えっ?」

「え?って何だ。大丈夫かと聞いたのは、君が俺と一緒にはいられない理由がなくなっただろうかという意味だ。君は、俺がエムテイの跡取りだから俺と一緒になるのをためらっていたんだろう?」

 私は驚きのあまり返す言葉が出てこない。

「俺の両親は既に高齢だし、父なんかあと五年生きていられるか。兄は既にいないし、あまり時間も経たないうちに俺の家族はいなくなるだろう。母は、まだ当分死なない気もするが、それもわからん。そう思ったら、せっかく出会って、好きになって、運命だと思う相手と一緒になりたいと思った。限られた時間の一度きりの人生だからな」

 私は、ただあっけに取られていた。

「正直、俺は君と離れるつもりはない」

 そう言うと、彼はベンチに腰掛けたまま、私の身体の自由を奪うように距離を近づけてきた。

「俺は、自分の全てを君に晒したつもりだ。あの夜。一度だけ。君には、その責任は取ってほしいとは思うな」

 彼は、いつの間にか私の腰に手を回して、太ももをピッタリと私にくっつけている。確かに、一夜でも共にした仲だから、こういうことをされても自然と身体を絡み合わせることができる。

「ああいう感じのは、他の誰ともしたことがない……」

 彼は、わざとらしく遠い目をして言った。

「君も、見かけによらず、ずいぶんとエロかったし」

「……あの、そういうことは、口に出して言わないでもらえますか? 今、ここで」

「君は、ベッドの中でも、めちゃくちゃ可愛いかったけどな?」

「もういいですから……!」

 私からは、さっきまでの肌寒さは吹っ飛んで、汗が出てきた。顔は赤く、たぶん耳まで赤い。

「誰もいないし、聞いていないだろう?」

「そういう問題じゃないです」

 でも、自分だってそうだと思う。あの夜は自分の全てを彼に委ねた。身体だけでない何かも。例えこの先、別の男性に出会ったとしても、それをできる相手はきっと彼以外にいないと思っている。

「黙っていた方が伝わるのか? 俺の気持ちが」

「そういうことだって、あると思います」

「そうか? それなら……」

 私たちは、夜更けの河辺の遊歩道で、抱き合って、気のすむまでキスを続けた。



──完
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