愛は手から零れ落ちる

婚姻届けは私の誕生日4月15日に提出すると達さんが決めてくれた。

結婚式はしないことに二人で決めたが、写真だけは記念だから撮ろうと彼が言ってくれたので、日曜日に二人でホテルの写真館にやってきた。

彼は事前に予約をしてくれていた。
髪を整え、化粧をして、私はウエディングドレスを着た。彼はシルバーグレーのタキシードだった。
彼が折角だから着物でも撮ったらと言ってくれていたので、私だけ着物も着た。
私はうれしかった。
成人式でも着物を着なかったので初めてだった。
そして着物の絹の重みが結婚の重みと重なりうれしさが倍増した。

私にとって夢のような時間だった。彼に心から感謝をした。


撮影が終わり、二人でレストランに行った。

「正人さん、本当にありがとう。ウエディングドレスだけでなく着物も着せていただいて、本当にうれしい。」

「だって披露宴もしないからこれくらいいいじゃないか。朋美どっちも似合っていたよ。綺麗だった。写真出来上がるのが楽しみだね。あとね、もうひとつプレゼントがある。これ。」

正人さんは新婚旅行のパンフレットを私に差し出した。

「なかなか二人一緒に長期の休みはとれないから、特別休暇で新婚旅行は行こう。朋美、海外は行ったことないよね。ハワイに行こうよ、マウイ島とオアフ島。」

「いいの? うれしい。有難う。」

私は正人さんからの愛を感じた。人からこのように想いを寄せられたことがなかったので、とにかく幸せだった。


初めて食べたフランス料理のフルコース。緊張もしたけどそれ以上に正人さんの笑顔で私は満腹になった。


食事が終わりホテルを後にした。

外は雨が降っていた。
念のため持って来た私の傘で初めて相合傘をして駅に向かった。彼が傘をさしてくれた。


何もかもが初めてで楽しくて幸せな1日・・・

そうなるはずだった・・・

< 2 / 22 >

この作品をシェア

pagetop