【コミカライズ原作】大正浪漫 斜陽のくちづけ
「電話です」
相楽が鈴木に帰る準備をするよう言ったすぐあと、事務所に家から電話が来た。凛子を送迎している運転手からだった。
「奥様がご実家に行かれた帰りに、買い物に立ち寄ってすぐ戻るはずが、そのまま帰ってきませんでした。探しに行ったら靴が片方落ちていました。一人にしてはいけないと言われていたのに申し訳ございません」
恐縮しきった声は震えていた。
「なんだって」
ただ事ではないと確信する。
護衛を兼ねて使用人を増やし、外出時も一人にしないよう指示したはずだったが、甘かった。
すぐに九条の家にも電話をかける。凛子の姉が受話器越しに叫んだ。
「相楽さん! 凛子が……連れていかれたみたいなの」
「落ちついて。なにがあったんです」
「それが帰ったあと、凛子を誘拐したと連絡があって。身代金を払わないと殺すと言われました」
よりによって自分がいない日を狙った用意周到さに、市村の顔が浮かぶ。嘘の連絡も、奴の差し金か。
「すぐに警察を」
「父が呼ぶなって。呼べば殺すと言われたそうです」
「俺が行く。場所は」
「海の近くの倉庫」
昔、市村が仕事で使っていた倉庫だった。
相楽が鈴木に帰る準備をするよう言ったすぐあと、事務所に家から電話が来た。凛子を送迎している運転手からだった。
「奥様がご実家に行かれた帰りに、買い物に立ち寄ってすぐ戻るはずが、そのまま帰ってきませんでした。探しに行ったら靴が片方落ちていました。一人にしてはいけないと言われていたのに申し訳ございません」
恐縮しきった声は震えていた。
「なんだって」
ただ事ではないと確信する。
護衛を兼ねて使用人を増やし、外出時も一人にしないよう指示したはずだったが、甘かった。
すぐに九条の家にも電話をかける。凛子の姉が受話器越しに叫んだ。
「相楽さん! 凛子が……連れていかれたみたいなの」
「落ちついて。なにがあったんです」
「それが帰ったあと、凛子を誘拐したと連絡があって。身代金を払わないと殺すと言われました」
よりによって自分がいない日を狙った用意周到さに、市村の顔が浮かぶ。嘘の連絡も、奴の差し金か。
「すぐに警察を」
「父が呼ぶなって。呼べば殺すと言われたそうです」
「俺が行く。場所は」
「海の近くの倉庫」
昔、市村が仕事で使っていた倉庫だった。