【コミカライズ原作】大正浪漫 斜陽のくちづけ
夫がごそごそ動いているのに気づき、凛子は目を覚ました。
「ん……え? あ」
着ていたはずのブラウスの釦が外され胸元が露になっている。添い寝だけのつもりが本格的に眠ってしまったらしい。
むき出しになった胸をもう慣れ親しんだ大きな手が撫でている。
もう日が落ちているようだ。部屋が薄暗い。
「悪い。起こしたか」
慌てて起き上がり胸元を隠すと、すぐに寝台に押し戻された。
「まだやることがあるのに」
今日も夕飯を作るつもりだった。
「そんなことどうでもいい。もう限界だ」
そう言うと再び服の中に手が入ってくる。胸の膨らみが力強い手に包まれ、形を歪めた。
「怪我してるのに駄目」
「無理だ、もう。昨日もあんな残酷なことをして」
「ざっ残酷? ひぁっ」
指の間に挟まれた頂きを刺激され、声が漏れる。
「風呂場まで入ってきて、体を洗った挙げ句拒んだ」
「あれは、お世話しただけでそんな意味では」
自分を守ろうとして怪我をしたのだから、完治するまで夫の世話は全てやると決めていた。
「凛子……」
瞳が情欲に燃えている。
一度こうなるともう成し遂げるまで収まらない。駄々っ子のように理屈が通じなくなる。
「傷が開いてしまうから駄目」
必死に言い聞かせるが、聞く耳などないようで凛子の胸を夢中で揉んでいる。
「まだ起き上がっちゃ駄目だってお医者様が」
「寝てるから大丈夫」
「そんな頓智は聞いてません!」
怪我人とはいえ、その力は強くて振りほどくことができずにいる。後ろから羽交い絞めのようにされ、体を好きなようにまさぐられていると、いけないと思いつつ反応してしまう。
「凛子はしなくても平気なのか」
耳元で低く囁く声は甘く、胸が切なくなってくる。
男性のような激しい情動はないが、こんなふうにされたら凛子だって辛くなる。
「怪我が治るまで我慢して……」
「これ以上我慢したら病気になりそうだ」
心が通じ合ってからというもの、ますます凛子に色々なことを言わせ、させたがるようになった。
閨で凛子をいいように変えていくことに心底悦びを感じているようだった。男性というのは意外と単純というか、下らないことで喜ぶというのも最近気づいた。
「あっ」
お腹を撫でていた手がいつの間にか下腹に触れ、指が淫らな水音を立てて、凛子の体内まで侵入してきた。
「凛子……」
名前を呼ばれ、体の奥まで刺激され、拒みきれなくなってくる。低い声が凛子と二人きりの時だけ甘い響きをもつ。その声が好きで耳元で囁かれると、なんでも言うことを聞いてしまう。
内部の弱いところを巧みに探し当て、撫でるように出し入れされるとすぐにでも気をやってしまいそうになった。
「すごい指締め付けてるのわかる?」
「わ、わからな……」
「はは。今度自分で指入れてごらん。見ててあげるから」
「あ、いや」
見られながら自分でするなんて、想像しただけでおかしくなりそうだった。
凛子が極まりそうなのを察すると指の動きが止まる。
「どうする? やめておくか?」
ゆるい刺激を与えながら、意地悪く訊ねる。
「駄目……休んで」
「やっぱりやめない」
濡れた指で敏感な突起を擦りながら、いかに彼が凛子を大切に思っているか滔々と語られ、頭の中まで蕩けそうな悦楽に、すぐに気をやってしまう。
「もう? こっち向いて」
ぐったりとした凛子の唇をうっとりとしばらく吸ったあと、
「凛子も触って」
手を取られ相楽の服の上から膨らみに触れる。
久しぶりの情事の予感に体の芯が震えるが、怪我が心配だった。少し迷ってから、相楽の浴衣を寛がせると、直接手で触れた。まだ最後までするのはよくない。
上目使いに相楽を見つめると、とてもやめてくれそうにない。なんとか収めないと無茶をすると思った。
熱をもち固くなったそれを手で握り軽くさすってみる。
「こう……?」
「もう少し強く」
言われたとおり強くすると、相楽のため息が聞こえた。手の動きに集中したいのに胸を強く揉まれる。
今にも押し倒そうな雰囲気を察して、体を起こして口に含んでみた。
──これで収まるなら体に負担もないかも。
いつも彼がしてくれるように唇や舌を使って愛撫してみる。
「上手だ」
頭を撫でる手が優しい。昼間はぶっきらぼうだが、こうして二人の時は惜しみない愛情を注いでくれる。
この不器用な優しさしか持ち合わせていない男と心が通じたことが嬉しくなる。
誰にも弱みを見せない男が自分だけに見せる少年のような無防備さが今はいとおしい。
夢中になって奉仕していると、肩の部分を押され引き離された。
「もういい。上に乗って」
最後までしないで終わらせるつもりだったが、それでは収まらないらしい。
「傷に障りませんか」
おずおずと訊ねると、
「凛子がしてくれるなら大丈夫」
怪我を言い訳に普段凛子がしないことをさせているような気もするが、ここまで来たら仕方がない。
怪我している部分に影響がないよう、ゆっくりと跨る。
「んっ」
久しぶりに迎え入れたせいか、圧迫感をいつもより強く感じる。腰を落とすと結合が深まった。
しばらくじっとしていると、先に物足りなくなったのは凛子のほうだった。
「どうした?」
「や、なんか変」
得体の知れない衝動に駈られ、もぞもぞと繋がったままの下肢をよじる。
そんな凛子の様子に相楽が相好を崩す。この人のこういう顔を見たことがないから、少し戸惑う。
「ははっ。正直だな。前みたいに突いてほしい?」
陶酔しきった顔でこくこくと頷く。
無遠慮な激しさで体を奪われた時を思い出すと、体が疼いた。
「優しくしようと思ったのに。少し乱暴なほうが感じる?」
「わ、わからない」
慣れるまでじっとしていると、下から突き上げられる。
「あっ、駄目って言ったのに」
「ゆっくりやるから」
体はもう教え込まれた快楽を覚えている。濡れた粘膜や体液が混じり合う淫猥な音にくらくらと目眩がしてくる。
緩慢な動きに無意識に自ら腰を揺らして、奥まで誘う。
「怪我、無事でよかった。正直言うとまだ心配でよく眠れないの。悪化したらどうしようって」
もし相楽になにかあれば、もう生きてはいけない。
「凛子を残して死ねるわけないだろう」
「あなたと会えてよかった……」
ゆるりとした腰の動きがにわかに激しくなると、自分でも声が甘くなっていくのがわかる。
互いに限界が近づいている。
「出すよ」
「え……あっ」
想像しただけで再び果ててしまう。
「言っただけで? 出されるの好き?」
「だ、だって」
熱い熱が体内で爆ぜる瞬間のことを思うと、くらくらした。
倒れこみそうになるのを堪えていると、腰を掴まれ、思いきり下から突かれた。気遣いの一切ない動きは、とても怪我人とは思えない。
「傷、開いちゃうから」
全く気にする様子はなく、絶頂に震える体内を抉られると、秘処から透明な雫が迸り、二人の下肢を濡らした。
「ふぁっ」
なにが起きたかわからないまま、頭の中が白くなる。
「凛子、体変わったな」
嬉しそうに呟き、相楽も溜め込んだ欲望を放った。
濃厚な情事のあと、自分の思わぬ体の反応に驚き泣いてしまった。
「大丈夫だよ、よくあることだ」
「そんなの知らない」
時を重ねるにつれ、心も体も溺れていく。そんな自分が時々怖くなる。
「そんなに、悦かった?」
「毎晩こんなことをしていたら死んでしまいます」
「それで死んだ人はまだいない。俺はまだできるけど」
「もういいです」
怪我人にこれ以上無茶をしてほしくない。それにただ寄り添っているだけでも、十分幸せなのだ。
しばしの間無言で抱擁を交わしていると、事件後荒れていた心が少しずつ平穏を取り戻す。
「少し昔のことを話しても?」
「ああ。もちろん」
「私、真一郎さんが好きでした。兄みたいに頼ってた」
相楽が複雑な顔で凛子を見つめている。こんな話を夫に聞かせるのはまずいだろう。けれど言うべきだと思う。
「彼が亡くなって、私は友達も失い、学校もやめて、家でも肩身が狭くなって、どこにも居場所がないような気がした。どうしてあんなことが起きたんだろう。どうすればよかったんだろうって過去ばかり見ていました。私に幸せになる権利なぞもうないのだと」
ただ心の赴くままに一気に話した。
「あの時から私の時間は止まってしまったの。私の人生はただ傾いていくのを待つだけだった。あなたは私より先に死なないって言ってくれた。あなたが私の時間を動かしてくれた」
凛子の太陽は沈んでしまって、もう昇ることはないのだと信じていた。あの日、夫がまっすぐに自分に思いをぶつけてくれるまでは。
「ん……え? あ」
着ていたはずのブラウスの釦が外され胸元が露になっている。添い寝だけのつもりが本格的に眠ってしまったらしい。
むき出しになった胸をもう慣れ親しんだ大きな手が撫でている。
もう日が落ちているようだ。部屋が薄暗い。
「悪い。起こしたか」
慌てて起き上がり胸元を隠すと、すぐに寝台に押し戻された。
「まだやることがあるのに」
今日も夕飯を作るつもりだった。
「そんなことどうでもいい。もう限界だ」
そう言うと再び服の中に手が入ってくる。胸の膨らみが力強い手に包まれ、形を歪めた。
「怪我してるのに駄目」
「無理だ、もう。昨日もあんな残酷なことをして」
「ざっ残酷? ひぁっ」
指の間に挟まれた頂きを刺激され、声が漏れる。
「風呂場まで入ってきて、体を洗った挙げ句拒んだ」
「あれは、お世話しただけでそんな意味では」
自分を守ろうとして怪我をしたのだから、完治するまで夫の世話は全てやると決めていた。
「凛子……」
瞳が情欲に燃えている。
一度こうなるともう成し遂げるまで収まらない。駄々っ子のように理屈が通じなくなる。
「傷が開いてしまうから駄目」
必死に言い聞かせるが、聞く耳などないようで凛子の胸を夢中で揉んでいる。
「まだ起き上がっちゃ駄目だってお医者様が」
「寝てるから大丈夫」
「そんな頓智は聞いてません!」
怪我人とはいえ、その力は強くて振りほどくことができずにいる。後ろから羽交い絞めのようにされ、体を好きなようにまさぐられていると、いけないと思いつつ反応してしまう。
「凛子はしなくても平気なのか」
耳元で低く囁く声は甘く、胸が切なくなってくる。
男性のような激しい情動はないが、こんなふうにされたら凛子だって辛くなる。
「怪我が治るまで我慢して……」
「これ以上我慢したら病気になりそうだ」
心が通じ合ってからというもの、ますます凛子に色々なことを言わせ、させたがるようになった。
閨で凛子をいいように変えていくことに心底悦びを感じているようだった。男性というのは意外と単純というか、下らないことで喜ぶというのも最近気づいた。
「あっ」
お腹を撫でていた手がいつの間にか下腹に触れ、指が淫らな水音を立てて、凛子の体内まで侵入してきた。
「凛子……」
名前を呼ばれ、体の奥まで刺激され、拒みきれなくなってくる。低い声が凛子と二人きりの時だけ甘い響きをもつ。その声が好きで耳元で囁かれると、なんでも言うことを聞いてしまう。
内部の弱いところを巧みに探し当て、撫でるように出し入れされるとすぐにでも気をやってしまいそうになった。
「すごい指締め付けてるのわかる?」
「わ、わからな……」
「はは。今度自分で指入れてごらん。見ててあげるから」
「あ、いや」
見られながら自分でするなんて、想像しただけでおかしくなりそうだった。
凛子が極まりそうなのを察すると指の動きが止まる。
「どうする? やめておくか?」
ゆるい刺激を与えながら、意地悪く訊ねる。
「駄目……休んで」
「やっぱりやめない」
濡れた指で敏感な突起を擦りながら、いかに彼が凛子を大切に思っているか滔々と語られ、頭の中まで蕩けそうな悦楽に、すぐに気をやってしまう。
「もう? こっち向いて」
ぐったりとした凛子の唇をうっとりとしばらく吸ったあと、
「凛子も触って」
手を取られ相楽の服の上から膨らみに触れる。
久しぶりの情事の予感に体の芯が震えるが、怪我が心配だった。少し迷ってから、相楽の浴衣を寛がせると、直接手で触れた。まだ最後までするのはよくない。
上目使いに相楽を見つめると、とてもやめてくれそうにない。なんとか収めないと無茶をすると思った。
熱をもち固くなったそれを手で握り軽くさすってみる。
「こう……?」
「もう少し強く」
言われたとおり強くすると、相楽のため息が聞こえた。手の動きに集中したいのに胸を強く揉まれる。
今にも押し倒そうな雰囲気を察して、体を起こして口に含んでみた。
──これで収まるなら体に負担もないかも。
いつも彼がしてくれるように唇や舌を使って愛撫してみる。
「上手だ」
頭を撫でる手が優しい。昼間はぶっきらぼうだが、こうして二人の時は惜しみない愛情を注いでくれる。
この不器用な優しさしか持ち合わせていない男と心が通じたことが嬉しくなる。
誰にも弱みを見せない男が自分だけに見せる少年のような無防備さが今はいとおしい。
夢中になって奉仕していると、肩の部分を押され引き離された。
「もういい。上に乗って」
最後までしないで終わらせるつもりだったが、それでは収まらないらしい。
「傷に障りませんか」
おずおずと訊ねると、
「凛子がしてくれるなら大丈夫」
怪我を言い訳に普段凛子がしないことをさせているような気もするが、ここまで来たら仕方がない。
怪我している部分に影響がないよう、ゆっくりと跨る。
「んっ」
久しぶりに迎え入れたせいか、圧迫感をいつもより強く感じる。腰を落とすと結合が深まった。
しばらくじっとしていると、先に物足りなくなったのは凛子のほうだった。
「どうした?」
「や、なんか変」
得体の知れない衝動に駈られ、もぞもぞと繋がったままの下肢をよじる。
そんな凛子の様子に相楽が相好を崩す。この人のこういう顔を見たことがないから、少し戸惑う。
「ははっ。正直だな。前みたいに突いてほしい?」
陶酔しきった顔でこくこくと頷く。
無遠慮な激しさで体を奪われた時を思い出すと、体が疼いた。
「優しくしようと思ったのに。少し乱暴なほうが感じる?」
「わ、わからない」
慣れるまでじっとしていると、下から突き上げられる。
「あっ、駄目って言ったのに」
「ゆっくりやるから」
体はもう教え込まれた快楽を覚えている。濡れた粘膜や体液が混じり合う淫猥な音にくらくらと目眩がしてくる。
緩慢な動きに無意識に自ら腰を揺らして、奥まで誘う。
「怪我、無事でよかった。正直言うとまだ心配でよく眠れないの。悪化したらどうしようって」
もし相楽になにかあれば、もう生きてはいけない。
「凛子を残して死ねるわけないだろう」
「あなたと会えてよかった……」
ゆるりとした腰の動きがにわかに激しくなると、自分でも声が甘くなっていくのがわかる。
互いに限界が近づいている。
「出すよ」
「え……あっ」
想像しただけで再び果ててしまう。
「言っただけで? 出されるの好き?」
「だ、だって」
熱い熱が体内で爆ぜる瞬間のことを思うと、くらくらした。
倒れこみそうになるのを堪えていると、腰を掴まれ、思いきり下から突かれた。気遣いの一切ない動きは、とても怪我人とは思えない。
「傷、開いちゃうから」
全く気にする様子はなく、絶頂に震える体内を抉られると、秘処から透明な雫が迸り、二人の下肢を濡らした。
「ふぁっ」
なにが起きたかわからないまま、頭の中が白くなる。
「凛子、体変わったな」
嬉しそうに呟き、相楽も溜め込んだ欲望を放った。
濃厚な情事のあと、自分の思わぬ体の反応に驚き泣いてしまった。
「大丈夫だよ、よくあることだ」
「そんなの知らない」
時を重ねるにつれ、心も体も溺れていく。そんな自分が時々怖くなる。
「そんなに、悦かった?」
「毎晩こんなことをしていたら死んでしまいます」
「それで死んだ人はまだいない。俺はまだできるけど」
「もういいです」
怪我人にこれ以上無茶をしてほしくない。それにただ寄り添っているだけでも、十分幸せなのだ。
しばしの間無言で抱擁を交わしていると、事件後荒れていた心が少しずつ平穏を取り戻す。
「少し昔のことを話しても?」
「ああ。もちろん」
「私、真一郎さんが好きでした。兄みたいに頼ってた」
相楽が複雑な顔で凛子を見つめている。こんな話を夫に聞かせるのはまずいだろう。けれど言うべきだと思う。
「彼が亡くなって、私は友達も失い、学校もやめて、家でも肩身が狭くなって、どこにも居場所がないような気がした。どうしてあんなことが起きたんだろう。どうすればよかったんだろうって過去ばかり見ていました。私に幸せになる権利なぞもうないのだと」
ただ心の赴くままに一気に話した。
「あの時から私の時間は止まってしまったの。私の人生はただ傾いていくのを待つだけだった。あなたは私より先に死なないって言ってくれた。あなたが私の時間を動かしてくれた」
凛子の太陽は沈んでしまって、もう昇ることはないのだと信じていた。あの日、夫がまっすぐに自分に思いをぶつけてくれるまでは。