純・情・愛・人
向こうで玄関ドアが閉まったのが聴こえた。静まり返った居間に、抜け殻になって座り込んだまま。

どうしていいか分からないくらい自分がグチャグチャで。抉られた心臓が辛くて、苦しい。

今すぐ抱きしめて欲しいのに宗ちゃんもいない。琴音さんというその人の隣りにいて、わたしを置いて。

何もかも打ち明けられる友達もいない。

お父さんもいない。

お母さん。お母さんだったら、なんて言った・・・?

「・・・っ・・・ッッ・・・」

涙が溢れた。独りぼっちが無性に悲しかった。

「そう、ちゃ・・・」

嗚咽しながら名前を呼んだ。呼びながら、沖縄の青い海で戯れる二人の姿が脳裏をよぎり、胸が千切れそうだった。

誰もいない薄暗い部屋でひとり、声を上げて泣いた。自分の中の黒いものが水になって、目から流れていった。

鼻をすすり上げる音だけが耳について、疲れて、ようやく(から)になった。

なにか答えに辿り着いたわけじゃない。

割り切れたわけでも、開き直れたわけでも。

宗ちゃんが好きで好きで、離れたら生きていけないほど好き。だから。

彼女を抱いた腕に抱かれよう。

彼女に口付けた唇を受け止めよう。

耐えられる。

濁らない、真っ直ぐな愛に包まれるなら。




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