愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

そうして一時間ほど経った頃、碧唯は仕事を終えて庁舎を出た。

午後八時半。腕時計で時間をたしかめたそのとき、背後から声を掛けられて振り返る。


「瀬那くん、待って」


イタリアの大使館にいたときに一緒に働いていた咲穂だ。
彼女も二週間前に外務本省に戻ってきたばかり。咲穂の所属は経済局である。


「一緒に帰ろ」


咲穂は庁舎から駆け寄り、碧唯の腕に絡みついた。


「離せ」


その手を引きはがそうとするが、彼女もなかなか手強い。


「冷たいこと言わないの」
「ここは日本だ。その距離感の近さは改めたほうがいい」


フランス育ちのせいか咲穂はスキンシップが激しく、パーソナルスペースを平気で侵してくる。
本人に他意がないのはわかっているが、生粋の日本人である碧唯には少々受け入れがたい部分だ。
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