愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

両手を上げる仕草は、まさにお手上げ状態。南は作業の手を止めて振り返り、彼女のもとへキャスター付きの椅子を滑らせた。

「ちょっと見せてみて」
「ここです」


真帆がパソコンの画面を指差す。
そこには地図情報システムと人口統計データを用いたソフトで導き出した、商圏分析の途中経過が表示されていた。あるチェーン店のデータである。


「あ、ここね。半径二キロ圏内の人口データの結果だけでは、それが多いのか少ないのかわからないわよね? だから比較軸やしきい値が必要になるの。そういう場合は……」


南がパソコンを操作して、手慣れた様子で次なる手法を伝授する。データ分析ならお任せ、お手の物である。


「なるほど。さすが南さん、ありがとうございます!」


パチパチと手を叩いて南を称える真帆を見て、ふと思い出す。


「そういえば真帆ちゃん、問い合わせへの返信をくれた相手先にお礼のメールは済ませてる?」
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