愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
南は碧唯にしがみつき、胸に顔を押しつけた。
その背中を抱き寄せ、髪にキスをする。
「俺は南とふたりでも十分幸せだけど」
「それは私もそうだけど……」
口にこそ出さないが、そのあとに〝子どもも欲しいの〟というフレーズが続くのは安易に想像がつく。
「よく言うだろう? 仲良し夫婦のところには神様が嫉妬して子どもを授けないって」
「そんなの初耳だけどそうなの?」
「たぶん」
「たぶんって」
どこかで小耳に挟んだファンタジックな話だ。信憑性も確実性もまったくない。
だが、それも一理あるのではないかとこの頃は思いはじめていた。
自分たちほど仲のいい夫婦はいないだろうと自信を持って言えるからだ。
「……それじゃ、碧唯くんと仲良くするのやめようかな」
「え?」
「仲がいいのがダメなら、喧嘩すればいいんでしょう?」
あくまでも真顔。南は本気だと言わんばかりだ。