愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
その夜、南は高校時代からの友人、綿貫千賀子に結婚報告をすべく電話をかけた。
キャリーケースを引っ張り出し、スマートフォンをスピーカーにして荷物を詰める。もちろんイタリア行きの準備である。
結婚すると打ち明けたときには会社の同僚たち同様に仰天し、その相手が碧唯だと伝えるとさらなる衝撃が千賀子を襲った。
《南が瀬那さんと結婚!?》
裏返った声が脳天を突き抜けていく。
同じく弓道部出身の千賀子は漫画がきっかけで入部した不埒な動機を持つ南とは違い、中学から弓道部に所属していた。
千賀子はくせ毛の南には羨ましいストレートロングの髪に、切れ長の目をした凛々しい美人。高校時代、的に向かうときの美しい立ち姿には男女関係なくドキドキさせられたものだ。
「勢いでそうなりました」
《勢いでするもの!? っていうか、いつの間に付き合っていたの? 私、聞いてないんだけど》
強烈な突っ込みのあと、ワントーン低い声で恨み節を唱える。親友に話さないとはなにごとだと、声の調子だけでわかった。