愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~

希望する観光名所をすべて巡った翌日、南は約束通り碧唯の部屋の荷造りや片づけをして過ごした。

ムーンストーンのネックレスというお駄賃を先にもらっているため、雑に済ませるわけにはいかない。
プレゼントに見合った働きをしなければと、丁寧かつスピーディーに。それは碧唯を唸らせるほどの手際の良さだった。

エリートを心服させるのは気持ちが良くて癖になりそうだ。

翌日はイタリアへ発つ最終日。南は碧唯に連れられてローマ空港へやって来た。
日本へ発つのは南ひとり、碧唯はあと一カ月ほどこちらでの勤務が残っている。


「じゃ、碧唯くん、行くね」
「ああ。気をつけて」


出発ゲートで振り返った南を碧唯が引き寄せる。イタリアではあたり前に交わされる挨拶の一種だと油断したのがいけなかった。

ぎゅっと抱きしめられて解放されたそのとき、碧唯の唇が南のそれと重なった。
ほんの一瞬、だけど確実に触れ合った唇が淡い感触を残して離れる。


「今度って言ったよな?」
「……それが今?」
「ああ。俺が帰国したら入籍しよう」


碧唯は南の頬をくすぐるように撫で、目を細めた。
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