愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「キス? フィアンセなら、なんらおかしくないだろ」
「……ですね」
フィアンセなら、するのは普通。
「唇にしようか?」
耳元で含ませたようにそっと囁かれ、体が粟立ったようになる。決して嫌な感覚ではなく、むしろその声をもっと聞いていたいと思うなんてどうかしている。
「それはまた今度でお願いします」
おどけた笑顔でくるっと振り返り、甘い空気を一掃する。
「結婚する自覚はあるのか?」
「……あるような、ないような」
碧唯はどことなくすっきりしない表情をしたあと、諦めにも似たような笑みを浮かべて南の手を取った。