なぜか推しが追ってくる。



もちろん「とにかく片っ端から全部見よう」だなんて野暮なことはしていない。

恭くんはホラーが得意でないと雑誌のインタビューで話していたからお化け屋敷は抜いてあるし、逆に謎解きゲームみたいな時間のかかりそうなものは多めに時間を確保してある。



「恭くんに文化祭を満喫してもらうために考えたスケジュールだから、他に気になるものがあればいくらでも融通利かすよ!」


「ありがとう。でも俺は瑞紀ちゃんと一緒に回れるならどこでも楽しいから」


「不意打ちでそういうセリフはだめだと思う!! ごちそうさまです!!!」


「ふふ、でもまあせっかくだし、瑞紀ちゃんが作ってくれたスケジュールで回ろうかな。まずは……」




推しを楽しませることに特化したこの時間。わたしと回るのが楽しいというのだから一緒に回らねば。私欲を満たすためとかじゃなくてね。ね。



……と、そんな感じで回り始めたわけだけど、予定というのは大抵の場合その通りにいかないものである。




「武藤さん……やっと見つけた、逃がさないわよ」



「うわっ、やば」




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