冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 そして、その様子を温かい目で見守る父母。そこには一つの幸せな家族の風景があって……。
 家族だけではなく使用人も含めて、すべての注目が不出来なレティシアに集まっている。

 なぜ、あの子に? 
 レティシアの取り柄なんて顔くらいじゃない? 
 頭も悪ければ、性格も行儀も悪い。やっかい者。それがこの家でのレティシアの立ち位置。それなのに……。

 ミザリーはわけの分からない敗北感を歯噛みした。

 どうなっているの?
 
 リーンハルトは優しい。だから、レティシアの数々の罵詈雑言や無礼な振る舞いを忘れ、きっと許してしまう。

 どうして彼はいとも簡単に人を許せるのだろう……。



 

 ◇

 熱が随分下がり少し元気になってくるとレティシアはリーンハルトと喧嘩し始めた。 

「全く信じられないよ。流感をうつすなんて」
「何よ! それだけ元気になったからいいじゃない」

 レティシアは喧嘩しつつもリーンハルトの額の汗を拭いてやり、こまめに着替えを手伝う。

「レティシア、水ちょうだい。喉乾いた」
 リーンハルトはそれが当然のことのように要求する。だが、そんなリーンハルトもまだ幼くて愛らしい。

「うるさいな。そんだけ元気なら自分でやればいいじゃない」
 レティシアがいかにも面倒くさそうなようすで応じる。

「お前がメイドをさげたんじゃないか」
 彼はそれが不満なようだ。

「だってメイドがうつったらどうするのよ? 私ならもううつらないじゃない」
 文句を言いつつも、レティシアは水差しからグラスに水を注ぎ彼に渡す。その水もリーンハルトが寝ているときに彼女自らつぎにいっている。

「こぼすんじゃないわよ」
 ちょっとお姉さんぶってみる。

「うるさい。お前じゃないんだ。こぼすわけがないだろ」
 案の定リーンハルトは不機嫌になった。

 なぜ、喧嘩をしているかというと今世でレティシアは彼に好かれる気は毛ほどもないからだ。そして絶対に謝る気もない。

 ――とってもとっても嫌うがいい。二度と私など庇って死ぬことのないように。


 その後もレティシアとリーンハルトは顔を合わせると喧嘩をするようになったが、しばらくすると彼らは口を利かなくなる。順調に仲が悪くなっているようだ。というより、リーンハルトがレティシアを相手にしなくなっただけだが。
 
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