貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
「どう言う……って、何が?」
「あんた、こっちが大人しくしてれば何もしないって!そう言ったじゃない!」
「それが?」

 取り付く暇もない、氷の仮面でも付けているような素っ気ない神山透の態度だが、今はそんなことには構ってなどいられない。こちらはとんでもない噂を流されて、とんだ妄想狂扱いをされているのだから。

「それが?じゃないわよ!あんた会社に何も言わないって言ってた癖に、部長に何か吹き込んだんでしょ?」
「は?」
「部長に、あたしを1課から追い出すようにチクッたんでしょ?!とぼけたって無駄よ!こっちはちゃんと知ってるんだから!」

 実際にはたった今、給湯室の前で噂話を立ち聞きしただけなのだがそんなことは重要ではない。洋子について面白可笑しく噂をされているという、この現状こそが問題なのだ。
 ギラついた鋭い視線を投げかけてやれば、相変わらず何を考えているのかわからない表情の神山透は、ふぅと一息ため息をつく。

「何か勘違いをしているようだけれど、僕は何も会社には報告していないよ」
「嘘よ!だって異動願いを出したって言ったじゃない!」
「確かに異動願いは出したよ?でも、それと君との話は全く関係無い」
「けど、あんたが異動願いを出したせいであたしは異動になるし、変な噂を流されるし、散々な目にあってるのよ!」

 神山透は一瞬驚いた様に目を見開いたが、すぐにまた氷の様な表情に戻ると、「本来ならばこんな話を君にしてあげる義務はないんだけどね?」と口を開いた。

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