貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
「さてと、まだ仕事は終わってないでしょう?」

 この続きはまた後でと、するりと腕をすり抜けてパソコンに向かうように促してやると、提案を断られたイケメンは、ほんの少し残念そうな表情をするが、すぐに何かを閃いたらしく満面の笑みで微笑んでいる。

「まあ、郁子さんにはこれからもっと別な特別なものを贈る予定がありますからね。今回はそういうことで譲ってあげますよ」
「え?特別な?」

 意味も判らずそんなものを贈られるのは、とてもじゃないが気が引ける。どういうことかと眉を顰めて聞き返す。

「そう。もっと高価で、もっと大事な意味のある、ね」
「大事な意味……?」

 怪訝な面持ちをする私を横目に神山透はテーブルの上の、アイスコーヒーに刺したストローが入っていた包み紙を指でつまむ。
 そして私の指に丁寧にそれを巻き付け、リボン結びで仕上げをすると、恭しくもイケメンはそっとその指先に口づけをする。

「これから先アクセサリーをどれだけ買っても構いませんけど、この指だけは、僕だけの為に空けておいてくださいね」

 包み紙が巻き付かれているのは、左手の薬指。

「え、それって……」

 プロポーズ紛いの言葉は今迄何度も受け取っていたらしい私だけれど、意識して聞かされるのはこれが初めてである。
 意味が判ると急に嬉しいやら恥ずかしいやら、なんで今このタイミングなのやらと、考えることが多すぎて頭が沸騰しそうになってしまう。
 真っ赤になっているであろう私の顔をじっと見つけるイケメンは、照れ臭そうにふわりと笑う。

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