貴方と私は秘密の✕✕ 〜地味系女子はハイスペ王子に夜の指南を所望される〜
「ええ、まあ。コンビニにお昼を買いに行こうと思って。神山さんもお昼ですか?」
「僕は午後イチで客先で打ち合わせなんで、外でお昼を食べて直行しようと思いまして。」

見知った顔にホッと胸を撫で下ろしその手に視線を向ければ、なるほどシンプルながら品の良い黒のビジネスバッグを握っている。相変わらずお忙しい様ですね、と声を掛けると神山透は一瞬こちらを見てニコリとする。

「そうなんです。なんだか急に忙しくなって。……だから、ほんの少しでいいんで、山本さんから元気を分けて頂いてもいいですか?」

そう話を続けると、空いた手を伸ばして私の手の甲をそっと撫でつけて、指と指をじわじわと絡ませてくる。
快感を引きずり出そうとしてくる様なその触れ方。
そんなことをされてしまえば一週間前ぶりの甘い震えが体を駆け巡る。

「ね、こっち向いて?」

その声に誘導されるように顔を上げると、目の前には首を傾げて近づいてくる優しく微笑む神山透の麗しき顔。そしてそのまま柔らかな唇が、ふわりと重ねられたのだった。

ほんの数秒僅かな触れ合いの後、狭く閉じられた空間の中に、チュパリと名残惜しそうに離れていく音が響く。

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