有り ふれた 人生

藤 吾  ③


佑未をどうしても
一人で帰したくなくて
車のキーを勝手に取り
送った。

望まれた事ではないが
俺の中では
ほっとしていた。

だが······
どうして·····
自分のしたこと
しでかしたことなのに
胸が苦しくてたまらない
涙が流れて止まらない

佑未を実家に下ろして
キーを返す
佑未の手に僅かに触れた

ビクッとする佑未の手から
キーは、落とされた。

もう·····二度と·····さわれ···ない····

ふと気付く
ああ、清家さん。

カフェにタクシーで戻ると
泣きながら座っていた。

彼女の涙には
何も感じる事はなかったが
「すみません。」
と、言ってから
彼女のアパートへ送った。

俺達は、いまからどうするか
まったく話していなかった。

彼女の両親からは、
DVの旦那から守り助けて
その上子供もできていて
ヒーローみたいに扱われた。
決してそんないいものではない。

だが、離婚後すぐだから
元の旦那さんの子供となるため
その手続は、清家さんのご両親が
「やります。」
と、言ってくれた。

そうなるのか·····
そのくらいしか
わかっていなかった。

当然ながら
家の両親からは、
怒涛の如く怒鳴られ
絶縁された。

父も歯科医で、まして
荒砂先生とも親しい

母親は泣き崩れていた。

俺と清家さんは、
入籍をして
母子手帳を貰い
俺は、清家に変わり
清家 藤吾となった。

そして清家さんの実家
近くにアパートを借りた。

・佑未への慰謝料→500万円
・清家さんから佑未への精神的苦痛料
 →300万円
・ユミクリニックを閉めるための
 損害賠償金→1.000万円
きりがないと佑未が言って
この金額となった。
大きな金額が動いた。

マンションは、
新築で購入したわけでなく
佑未と二人で何軒も不動さんを
みて探した物件だった。
1500万円で、購入したが
1000万円で売却
500万ずつに分けられ
俺の方でクリーニング
解約手続き、廃棄
を行う。

藤吾の預金は
ほぼなかった。
マンション売却の残金でアパートを
借りた。

清家さん宅が使っていた
家具家電等は、俺達か使っていた物より
使い辛いため
こちらのを持って行った。

佑未の使っていたもの
ベッドとかドレッサーとかは、
廃棄した。

家具家電のみ。
子供ができるため
3LDKになり
ベッドは、2台にした。
なぜか、一緒に寝る
そんな考えはなかった。

俺は、仕事探しを
やっと見つけた。

歯科医間で情報が回っていて
中々見つからなかった。
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