有り ふれた 人生


大学中に、付きあっていた
梓とそのまま結婚をした。

お互いをわかっているし
俺としても梓で
良いと思っていた。

だが、入社すると
仕事が面白くて
出張に行けと言われたら
どこへでも行き
やればやるほど認められることが
楽しくて仕方なかった。

そんな日々の中
梓が、どんな思いをしていたか
そんな事を考えても
いなかった。

浮かれていた
飲み過ぎて前後不覚に
なった挙げ句に
目を覚ますと
知らない女が裸で寝ていた。

起こして話すと
最後のバーの女らしく
謝罪をしてから
帰宅すると

梓は·····
いらないなら、なぜ結婚をしたの
と、行き成り手首を切りつけた。

止血をして病院へと運び
両家へ連絡した。

梓の父親からは
殴られたが
そんな事で済むような事ではない。

梓の手首は、回復しても
心は、回復せずに
一年、二年と過ぎて行った。

俺とは、病院に運んだ次の日には
離婚届を出された。

俺の親父もいたから
証人欄に記入した。

あれから10年

その間に
何もなかったか?
と、言われたらあった。
だけど、本気になることはなかった。

怖いのと
本当に仕事が面白かったからだ。

そんなときに
クアラ・ルンプルでお世話になっている
歯科医のアイダン医師のとこに
歯の治療に行くと
日本人の綺麗な女性がいた。

彼女は、荒砂 佑未さん。

俺は、荒砂さんに会いたくて
虫歯の治療が終わっても
理由をつけて通うと

アイダン医師は
ニヤニヤしながら
荒砂さんに
「色んな理由をつけて
此処に、来ているんだよ。
一度だけで良いから
一緒に食事でも
してやってくれないか?」
と、言いだし 
「アイダン先生!!」
と、言うと
「本当の事だろうが。
体は、でかいくせに。」
と、言われて
「体は、関係ないでしょう。」
と、言い返すと
荒砂さんが笑いだして
苦笑いをするしかなくて
「毎日、一人で食事をしています。
一緒に食べてくれますか?」
と、言って貰えて
「はいっ、はい。
 本当によいのですか?」
と、言うと 
「はい。お願いします。」
と、言われて
俺は、直に店に予約をした。

アイダン医師は、
ニヤケていた顔から真面目に

「うちの大事な歯科医だから
くれぐれも頼むよ。」
と、言われた。

それから、何度か食事をしたり
休みがあえば出掛けたりした。

荒砂さんとは話もあうが
趣味も似ていて
所有している車が同じで
俺は、ファイアットアバルトの
青を日本に置いてる
彼女は、赤を所有していると。
なぜか嬉しかった。

あの日は、俺達が、行った店に
日本人が多くて 
佑未は、
「まるで日本みたい。」
と、はしゃいでいた。

やっと連れて帰る
帰らないと騒いでいた。

だが、ホテルに着くなり吐いて
「やだ、汚い。」
と、一人で騒いで着ているものを
全て脱いでから
「シャワーを浴びる。」
と、言い出して
一緒に入るしかなかった。

佑未は、フラフラしていたから
それからは、理性も無く
佑未を抱いた。

その日から
次の日に差し支えなければ
身体を繋げていた。

俺は、初めから佑未に対して
気持ちがあった。

だから、付きあって欲しいと
もちろん、結婚を視野にいれて
だが、佑未はそんな気持ち?
考えはなかったのか
ぎくしゃくしていた。

そんなときに
佑未が日本にいる友達が
出産したとかで帰国した。

俺には、何も言わずに。

駄目なのだろうか?
と 思っていたが·····

クアラ・ルンプルへ戻ってくる
時に連絡があり
空港へと迎えに行った。
その日は、久しぶりに佑未を抱いた。

気持を込めて·····

だが······

二人で食事をしようと
なっていたのに遅れてしまった

ついてみると
佑未の姿は無く

俺達が座るはずだった席の斜め前に
俺の会社関係者が食事をしていた。
「あっ、髙山さん。」
と、言う奴らに
何を話していたか?を訊ねると
俺の噂話しをしていたらしく
「二度と俺の話しを
俺の許可なく話すな。」
と、言い捨て佑未に連絡する。
 
体調が、悪いから寝るという佑未。

何度かラインや携帯をならすが
応答が無くなり
心配で佑未のアパートメントへと行き
佑未の部屋のドアをノックをする

何度目かに、やっと佑未から
返答があり

中に入り話しをした。

佑未の旦那も浮気をして離婚
まして佑未の経営する
歯科の従業員と
子供まで出来ていた。

浮気をした
旦那と俺は、同類で
佑未には、許せる相手ではない。

無理なんだな?
と、訊ねたが
佑未は、黙って頷いた。

過去は、変えられない。
それを受け入れられないと
言われたら
どうしょうもなかった。

佑未は、しばらくすると
アイダン医師の歯科から
居なくなり
クアラ・ルンプルから
出国した。
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