有り ふれた 人生

ラベンダー畑


富良野に住んで一年が過ぎた。

寒さも十分に味わった。
泉先生と泉先生の旦那様に
何度も助けて頂いた
寒すぎる。

だが······

待ちに待った
この為に富良野市に住みついた。

初夏、圧巻なラベンダー畑

休みの日には、毎日でかけいる。
お弁当を作ったり
サンドイッチを作って
コーヒーを持ってから行く。

「うふふっ。楽しみ。」

「あっ、いたいた。」
「あっ、泉先生?」
「本当に好きだね。」
「はい。自分の家に持って返りたい
位です。先生?一人ですか?」
「いえ、夫とよ。」 
と、言われて
ご主人を探すと直にこちらに
やって来たので
ご挨拶をする。
三人で私の淹れたコーヒーを
飲みながら
ラベンダーを見る。

先生は、
「まだ、居るの?」
と、呆れながら帰って行った。

私は、お昼のサンドイッチを
食べながら
ラベンダー畑に目をやる
この空間の中で、本を読んだり
ゆったりと過ごす。

夕方になり
寒さが身にしみだす頃に
片付けて帰宅する。

「···佑未?···」
と、言われて
そちらを見ると
「えっ、靑?」
少し痩せた靑がいた。

お互いに言葉もなく
お互いを見ている
「あっ、帰る所だったんだろ?」
「あっ、うん。
あお···、髙山さんは、仕事?」
「ああ。少しトラブルがあったみたいで
呼ばれた。二、三日の予定。
北海道に住んで······
あっ、いや。いい。」
「あははっ。
別にそんなに畏まれなくても。
ごめんなさい。
そう、今は富良野市で暮らしている。」
「温かなクアラ・ルンプルから
寒い富良野市ね。
俺もクアラ・ルンプルの仕事を
終わらせて本社に戻ったんだ。」
「そうなんだ。本社に?
アイダン医師も寂しくなったわね。」
「ああ。そうかも。
ゆ···、荒砂さんのアパートメントを
若い歯科医に貸してから
勉強させているみたい。」
「良かった。役にたっているなら。」
と、ラベンダーを見ながら
伝えると
「あっ、邪魔して悪かった。」
と、言う靑に
「あっ、これから何もないなら
食事でも?」
と、自分でびっくりしたが
口から出ていて
「あっ、うん。
富良野で美味しい物が 
食べたい。」
と、言う靑に
「了解。」
と、言いながら片付けをして
まとめると駐車場へ。

愛車のフィアットアバルトに
近づくと
「あっ、本当に赤に乗ってるんだ。」
と、興奮気味の靑に
「冬は怖くて運転できないけど
やはり、手元に置いて置きたくて
運んだの。」
と、言うと
「俺も手元に置いてる。」
と、言いながら
車をくるりと回って
中を覗いてと忙しそうだ。

そんな靑がおかしくて
クスクスっ笑っていると
「あっ、ごめん。」
と、言う靑に
「いいよ。」
と、言いながら笑いがとまらずに
「クスクスっ、乗って。」
と、言うと
助手席に乗り込み
また、あちこちを見る靑
本当にこの車が好きなんだ。

「靑は、左ハンドルだよね?」
「ああ。うん。」
「私は、右ハンドルにしたの。」
「右も良いね。」
と、言いながらキョロキョロ
本当におかしい。

「でも、靑の体からしたら
ベンツ?とかアウディ?とか」
「う〜ん。でも、やはり、
フィアットアバルトが良いよ。」
と、言う靑。

お店の駐車場に車を停めて
「ついたよ。」
と、言うと
気もそぞろに······

ここは、泉先生に連れて来て
もらったお店。
なんでも美味しい。

久しぶりの靑との食事は、
楽しくて、料理も美味しかった。

お互いにクアラ・ルンプルの
時の話はしない。

ただ····

思っていたより
自分が靑に惹かれていた事がわかり
どうしてよいか
わからなかった。

食事を終えて靑を
靑が宿泊しているホテルへ送るが···

互いに口数が少なくなる。

「明後日は、東京に戻る
明日、一緒に食事だめか?」
「うん。大丈夫。
  連絡する あっ·······」
「クスっ、消したんだろ?」
「ごめん。」
と、言うと
靑は、私の携帯を鳴らした。

これで、ショートメールも出来る
「ありがとう。」
と、言うと
靑は、
「こちらこそ、ありがとう。
凄く美味しかったし。
何より佑未に会えて良かった。」
と、言うと車を降りてから
バイバイと手を振っていた。

私も手を振り
愛車を動かした。
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